東大教養学部のテキストでPythonのお勉強

東大は国立大学の中で学生数が一番多く、理系は1学年約1,800人です。そこで全員に使わせるテキストは普通に売っても商業的に成り立ちます。そんなテキストの一つ「Pythonによるプログラミング入門 – アルゴリズムと情報科学の基礎を学ぶ」を途中までやってみました。

前提知識の要求は低くて、高校2年程度、文系進学コースでも数学を捨てないパターンならやってるはず、の数学でなんとかなります。必要な公式などは書いてくれているので忘れていてもだいじょうぶ。
すでに何らかのプログラム言語をやっている私たちには、プログラムから逆に何をやりたかったのかわかるものも多いです。例えばΣ記号はずいぶん久しぶりに見ましたけれど、要するに1からnまでループすればいいです。そんなことなら仕事で毎日やってます。

で、最初の足し算・引き算・掛け算・割り算から順に例題と練習問題をやってみたのですが、

先生!練習問題2.4. は式がまちがってます!

理系の学生さんは自分で正解を見つけてなんとかしてください。ITの職場なら元が間違っているようなことは日常茶飯事ですから。

私たちの普段の仕事と違って面白いのは、グラフなどを描くことができるライブラリです。単純なものなら1行で書くことができます。放物運動のシミュレーションとして、放物線アニメーションを表示する例題もあります。必要なもの一式をインストールする手はこちらにまとめました。
https://pages.michinobu.jp/t/installanaconda.html

後半の章には p値、モンテカルロ法、回帰分析、クラスタリングなど、AIや機械学習でも使うことになりそうなものが出ています。プログラムの行数は意外に少ないです。コーディングができだけではその方面の仕事にはならないでしょうから、続きをやってみようと思います。

それから、最近、ハーバード大学の教材も日本語化されています https://cs50.jp/ 。そちらはSQLやHTMLなどを含む実用的なものです。

■ コンピュータ・ユニオン ソフトウェアセクション機関紙 ACCSESS 2021年7月 No.405 より

アンガーマネジメント学習会

― 怒りのコントロール ―

MIC(日本マスコミ文化情報労組会議) 女性連絡会と新聞労連東京地連主催の「アンガーマネジメント学習会」が4月9日18:30からオンラインで開催されました。参加者は70人程でした。学習会は新聞労連東京地連の寺田正委員長の司会で始まりました。講師はアンガーマネジメントファシリテーターの田部知江子弁護士(東京弁護士会所属)でした。ハンセン病問題や原爆症認定等の支援活動もされているとのことでした。

さて、本題です。アンガー(怒り)とは、人間にとって自然な感情の一つで、その役割は身を守るための防衛感情とのこと。でも、怒りは度を超すと問題が生じます。些細なことで激高したり、いつまでも根に持ったり、しょっちゅうイラついたり、他人や自分を傷つけたり、物を壊したりします。

では、怒りのもとは何でしょう。それは、理想と現実のギャップであるとの事。「べき」、「はず」、「普通は」、「当たり前」という思いが、相手に対する怒りにつながるそうです。これには、お互いの違いを理解したうえで集団としての優先順位とルールを決めることが大切と説明されました。

例えば、シェアハウスで暮らす場合のルールづくりですが、その集団の全員が、それぞれ、これだけは守って欲しいという項目を列挙し、各人が全項目に優先順位をつけ、その優先順位を項目ごとに全員分合計する。その合計の小さいもの順に集団としての優先度が高いとみなし、実践するというやり方です。学習会ではグループに分かれ、ワークショップ形式でやってみました。項目としては、役割分担を決める。使ったものは元の位置に戻す、トイレ使用後は、きれいにしておく。冷蔵庫の品物は勝手に使わないなどだ出されました。このルール作りは、すぐに実践できそうなので、同居人がいる方は参考にされてはいかがでしょうか。

続いて怒りが生まれる背景には、つらい、苦しい、疲れた、不安、焦りなどがあり、これらが引き金となって爆発します。

では怒りをどう制御したらよいのでしょうか。まずは衝動を制御する6秒ルールです。心の中で、「冷静に、冷静に、……」を6秒間言い続けるのも一法だそうです。二つ目が思考の制御で、「許せる範囲」、「まあ許せる範囲」、「許せない範囲」を自分なりに決めておくことが大切だそうですが、曖昧になりがちな「まあ許せる範囲」が、その時の気分によって変動するのはよくないとのことでした。(怒りをぶつけられた人が、ぶつけた人を信頼しなくなるため。)3つ目が行動の制御で、怒りの対象が変えられるものなのかどうかで自らの行動を「即行動」、「折を見て行動」、「受容する」、「ほおっておく」という基準を持つべきとのことでした。

最後に、叱ることについて解説がありました。叱るとは叱られる人に対する要望であり、叱る人の気持ちであること。また、叱る技術は練習で上達するそうです。機嫌の良し悪しに左右されない基準を作ること、人格・性格・能力攻撃はNG。事実・結果・行動・行為・ふるまいはOK。人前で叱るのはNG。感情をぶつけるのはNG。叱るときのNGワードは、「以前から言っているけど」、「どうして?・なぜ?」、強い口調で「いつも・絶対・必ず」、「ちゃんと・しっかり・きっちり」。上手な叱り方は、基準が明確なこと。要望が具体的であること。穏当な表現・態度・言葉使いで相手を責めないことだそうです。

すべての人が自分の感情に責任が持てれば怒りの連鎖を断ち切ることができると結論付けていました。

今回の学習会で感じたことですが、上下関係であれ、家族関係であれ、人間関係ではお互いを尊重することが何よりも大切なのではないかという事でした。

■ コンピュータ・ユニオン ソフトウェアセクション機関紙 ACCSESS 2021年5月 No.403 より

定年退職後に同じ会社に派遣

実はコンピュータユニオンにもたまには労働相談があるんですよ。さほど多くは無いんですが、11 月の初旬にも電話での相談がありました。

正社員で働いている方からの相談で、59歳から 60歳になるタイミングで給与が元の 4割にまで下がるという相談でした。もともと役職にはついておらず役職の変化もなく、作業内容も変わらないのに 4割に引き下げられると言うのです。定年後再雇用かなと思いながら話を聞いていましたが、よくよく聞くと、定年後再雇用でもありませんでした。

どうやら大きな会社に勤めているようで、グループ企業の中に派遣会社があるそうです。そして、60歳になるタイミングで元の会社を辞めて派遣会社に転籍をし、元の会社の元の部署に派遣で仕事につくという話でした。派遣においては、離職後 1年以内の人を元の勤務先に派遣をすることが禁止されています。しかし 60歳以上の人はその限りではなく、許されています。また、別の会社への転職なので、新しい会社での給与額が現在の給与額と比較して少なくなっても、過度に引き下げられたと違法性を問うことも難しいと考えられます。実態はともかく、派遣では事前に誰かを特定して受け入れることは禁じられているので、それを問題点として指摘することも可能ですが、その場合は元の仕事を継続すること自体ができなくなる危険性があるので、得策ではありません。

ちょうど 10月末に名古屋の地裁で、「再雇用の基本給が 6割を下回るのは不合理」という判決が出たところだったので、転籍とはいえ形を変えた再雇用ではないかと主張して、この判例を盾にして交渉することはできるかもしれないと伝えて対応を終えました。

■ コンピュータ・ユニオン ソフトウェアセクション機関紙 ACCSESS 2021年1月 No.399 より

労供の仕事いろいろ

派遣や請負、契約社員など正社員でないいろいろな働き方が増え続け、いまや四割が非正規雇用です。そんな中、労働組合による労供で働く人はどんな仕事をしているのでしょう。私たちも入っている労供労組協に加盟している組合を紹介します。

最初にご紹介するのは全港湾。港湾荷役関連の個人加盟組合で約2万人超。北海道から沖縄まで支部があり、大型貨物車の運転士、作業員など22職種で月平均850人が労供で働いています。なかでも貨物船からコンテナを陸揚げするガントリークレーンの操縦は「労供の息のかかってないヤツはいない」と委員長が豪語するほど。ガチでガテンな男の職場という感じです。

ガントリークレーン 先端の小部屋が操縦席
ガントリークレーン 先端の小部屋が操縦席

ガチと言えば連帯労働組合関西地区生コン支部。日々雇用の労働者の権利を守るために日雇い手帳をめぐりハローワークとも戦っています。ネットではデマ攻撃ばかりされていますが、弱い立場に置かれた人に寄り添った活動をしています。

表紙の猫がかわいい関生の書籍

私たちの事務所があるタブレット根岸の5階に事務所を構える労供労連。タクシー、ダンプカーや観光バス、選挙の宣伝カーの運転手もやってます。派遣では禁止されている交通誘導警備員も。東京都のゴミ収集車の運転と作業員の多くは労供だそうです。

ガテン系でないところでは介護家政職ユニオンの介護士やヘルパーさん。中にはや個人のお宅と何十年も契約しているベテラン家政婦さんもいます。

日本音楽家ユニオンでは結婚式やイベントでの演奏、レコーディングスタジオのミュージシャンなどが労供で働いています。著作権やオンラインでの音楽の対価支払など音楽家の権利の問題で国際組織と連帯して活躍しています。

全国には100を超える労供事業所があり、労供労組協に加盟しているのはその半分。非正規のまま長年継続を繰り返してきた学校給食の調理員や用務員など公務労働の分野や、地方の工場で仕事が減らされている外国人労働者を支援する組合が、これから労供でやっていこうと模索しています。

ふだん町なかで見かける働く人々はもしかしたら労供かもしれません。スーパーで買う輸入食品を船から降ろす人、トラックで運ぶ人、買物中にふと耳にする音楽を演奏する人も、ゴミを集めて片づけてくれる人も、いたるところに労供の仲間がいると思うと、ちょっとうれしくなりませんか? 


労供労組協(労働者供給事業関連労働組合協議会)

1984年2月に14組合100名で結成し、現在は19組合、組合員総数約85万人。うち労供事業就労は約6,000人。労働者派遣法が成立する過程で、職安局長の私的諮問機関から「派遣法制定と労働組合による労働者供給事業の廃止」が提言され、これに危機感を感じて結成された。


■ コンピュータ・ユニオン ソフトウェアセクション機関紙 ACCSESS 2020年12月 No.398 より

被爆者に国境はない MIC広島フォーラム2020

韓国人被爆者支援から日韓交流、そして核なき世界へ

今年のMIC広島フォーラム、長崎フォーラムはオンラインで行われました。現地に赴いて多くの人々と直接話すことができず寂しい思いもありながら、8月6日に行われた広島フォーラム、9日の長崎フォーラムの動画を視聴しました。

【広島フォーラム】

豊永恵三郎氏さん(韓国の原爆被害者を救援する市民の会・広島支部)のインタビューとパネルディスカッションが行われました。

9歳で入市被爆(原爆投下後に市街地に入って残留放射能に被爆)した豊永さんは高校教師をしていたときに在日韓国朝鮮人差別を知り、それ以来、在日コリアンに寄り添ってきました。71年にソウルを訪ね、初めて海外で暮らす被爆者と出会います。

「放射線の影響があって満足に働けず、すさまじい窮乏生活でした。韓国の政府からも日本の政府からもまったく援助が無かったからです。しかも、当時の韓国は軍人の政権で平和運動なんかできませんでした。」

72年に「韓国原爆被害者を救援する市民の会」広島支部を作り、在韓被爆者の被爆者健康手帳取得などの支援を始めます。1980年に始まった政府間の渡日治療事業(韓国の被爆者を日本に招いて治療する事業)がたった6年で終わった後も2014年まで民間で続けました。 「日本は明治以降植民地支配をして、たくさんの人が日本に来ましたよね。広島は「軍都廣島」ですから、韓国で生活できなかった人が仕方なしに来ました。それから日本が戦争に負け始めて、強制連行をして軍需工場で働かせた。そして被爆した。その人たちを日本の国、政府は放置したわけでしょう。日本には戦争に対する加害責任があるのだから、きちっとした補償をすべきだと思ったんだけど、日本政府が補償をしないので市民運動で少しでもできることをやっていこうとしたのです。」

朝鮮半島出身者以外にも台湾、東南アジア、アメリカ、ブラジルにも被爆者はいて、留学生や捕虜も被爆しました。そうした「在外被爆者」の総数はわかっていません。被爆者総数の約1割はいるのではないかと言われています。

資料「在外被爆者裁判一覧表」によると74年から今に至るまで43件もの裁判が闘われました。

「在外被爆者は多くの裁判で勝って、多少とも援護ができるようになりました。でもまだ補償ができてない朝鮮民主主義人民共和国の被爆者が一番困ってると思う。」

昨年、広島と大邱市の市民グループが「核兵器廃絶と平和な世界の実現をめざす大邱と広島の会」を結成しました。  「核兵器をなくす、戦争をなくすということを、日本と韓国の若い人たちにも理解してほしい。そのために交流を続けたい」と語りました。

【長崎フォーラム】

「被爆75年 創作で語り継ぐ原爆」と題して、原爆の絵を描き続ける画家の尾崎正義さんと映画監督の松村克弥さんにインタビューしました。松村監督の戦後の長崎を舞台にした新作「祈り~幻に長崎を想う刻~」は来年夏に公開予定です。

【平和アピール】

核兵器のない平和な世界を構築するために、国境を越えた市民の連帯をと呼びかける「広島アピール2020」を採択しました。

https://youtu.be/3ysHRZ8mrxA

■ コンピュータ・ユニオン ソフトウェアセクション機関紙 ACCSESS 2020年9月 No.395 より

リモートワークどうでしょう?

SSでは、約半数のメンバーが在宅勤務をしています。通常勤務の方もリモートワークの働き方は気になるのではないでしょうか。4人の組合員に現状を教えていただきました。

Aさん(業務系(流通))

契約先からThin Clientとヘッドセットを貸与。客先のVPN基盤経由で自席で起動したままのPCに接続している。

勤務開始終了時に作業項目をリーダーにメール連絡。

もともと口頭での作業の依頼を原則として断っているので、作業の形はほとんど変わっていない。内線電話がないので原則を破って電話してくる人がいないのはうれしい。

リモートではできない作業が週に1〜3時間程度あるが、テスト・運用等のために出勤している他の協力会社メンバーに代行していただいているのが心苦しい。

もともと災害被害や感染症の報告の手順が決まっていて、協力会社メンバーを含めて定期的に訓練もしている職場。3月からはプロパーも協力会社メンバーも毎朝健康状態を報告し、マスク着用必須になっている。マスクは備蓄があったらしく、協力会社メンバーも含めて入手できなかった人に配布している。

Bさん(インフラ系)

客先にある作業端末に、貸与されたPCからリモート接続して作業をしている。チーム内ではチャットツールで作業確認やミーティングをしている。

朝の始業確認と終業時の進捗確認、残業確認があるので通常通りに勤怠は管理されている。作業場に出勤する場合は、事前の許可が必要。

他のチームからの問い合わせなどはメールで対応している。話をした方が早いと思われる場合でも、文章や資料で説明をしなくてはならないのが面倒。また、文章だとよく読んでもらえない場合などでは誤解を生みやすい気がする。普段の作業場より静かなので、邪魔が入らない分、集中力は上がっているのではないかと思う。

Cさん(汎用機(損保))

貸与されたPCを使っているが、自前のPCでも利用可。リモート接続で、起動したままの職場のPCにアクセス。インターネット回線は自前のものを利用している。

簡易な勤務台帳(Excelファイル)で日々、自分の名前の欄に業務開始時は「在宅」、業務終了時は「退社」を入れる。別途、朝ミーティングでその日の作業予定を、業務終了時は作業実績の報告をメールでおこなっている。連絡は電話とメール、会議はGoogle Meetによるビデオ会議を使用。

ネット回線のスピード低下や、回線使用率が高くなると操作のレスポンスが悪化して作業のやりにくさを感じる。

対面でできた気軽なコミュニケーションができなく不便を感じることはある。最初は作業環境が変わったことで、肩こり・肩こりからくる頭痛に悩まされて1、2週間ほど集中力が続かない状態が続いたが、小休憩の時間に体操を始めてだいぶ軽減した。工程完了を間近に控えてスケジュールが逼迫しており、業務中に趣味の誘惑に駆られるほどの時間的余裕はない。自宅にこもっての作業が続いている中で、買い物を兼ねての早朝の散歩がリフレッシュになっている。

Dさん(在庫数を自動連係するシステムの保守)

PCとルータをエンドユーザから貸与。

開始時と終了時にTEAMSで勤務報告している。

邪魔が入らないので、静かに作業ができる。通勤がないのが、こんなに楽だとは思わなかった。自分のペースで仕事ができるので心地いい。一方、話が伝わらないことにやりにくさを感じる。特に知らないことを伝えようとしたとき、いくらパワポがあっても本当に伝わらない。あときつい言葉を言われた(書かれた)時は、対面だとそうでもないのだろうが、顔が見えないぶん突き刺さる。


みなさん、給料や作業量に変化はないそうです。利点欠点ありながらも努力されてる様子が伺えますね。新型コロナが収束しても、危機管理や環境保護の面からも、一度始まったリモートワークは広がっていくのではないでしょうか。懸念されたインシデントも今のところ無いようですし、より働きやすい仕事ができるといいですね。

■ コンピュータ・ユニオン ソフトウェアセクション機関紙 ACCSESS 2020年6月 No.392 より

台風被害を乗り越えて あまてらす鉄道(宮崎:高千穂峡)

宮崎県高千穂峡に、あまてらす鉄道という人気の観光スポットがある。往復 2.5km の線路を、自然を感じながらゆっくり走り、かつて東洋一高いといわれた高千穂鉄橋からの眺めを堪能出来るスーパーカートだ。しかしこの鉄道会社には悲しい歴史があった。

国鉄時代の高千穂鉄道は、清流五ヶ瀬川に沿って延岡市―高千穂町までの全長 50km を、19駅で停車しながら 1時間半かけてゆっくり走っていた。

一時廃止対象路線となるが、1989年第 3セクターが国鉄から運行を引き継いだ。しかし年間 7000万円の赤字という苦しい経営が続き、再び廃線の危機が訪れていた。

そして運命の 2005年、宮崎県を襲った台風 14号により五ヶ瀬川が氾濫した。高千穂鉄道の被害総額は約 26億円、小さな鉄道会社が払える金額ではない。

廃線へと向かう流れの中、住民たちが立ち上がる。チャリティライブや大掃除、住民たちの集い等様々なイベントを行い、もちろん県や市には何度も陳情に行き、橋の修復を願い出た。

しかし陳情は認められず、高千穂鉄道は経営を断念。職員 40名は全員解雇。国鉄時代から 70 年間続いた高千穂鉄道は消滅した。

19 個あった駅でただ一つ残ったのが高千穂駅。廃線となった 2008年にこの駅を借り受け、ある会社が立ち上がる。始めは手押しの木製トロッコを押しての営業、その後エンジン付きに改良、座席数を増やしていき、ついには 3,500万円をかけて 30人乗りのグランド・スーパーカートを導入した。

そしてついに平成 27年度黒字に転じる。ホームは人で溢れ、平成 29年度には来場者数 2,600人→43,000人まで増加した。

職員の表情は皆明るく、積極的に自分たちから話しかけてくる。ハイシーズン期には、オープン前から 100人の行列が出来るという。

ポリシーは、「補助金を受け取らない」こと。補助金を受け取ると、お金だけではなく口もついてくるので、自分たちのしたい事ができない、という理由からである。

取材時、宮崎 TVの取材も同時に入っていたため、アナウンサーに話を聞いたところ、ここは人気のスポットで、何度も放送されているという。

あまてらす鉄道の今後の発展を願わずにはいられない。

■ コンピュータ・ユニオン ソフトウェアセクション機関紙 ACCSESS 2020年3月 No.389 より

同一労働同一賃金制度が4月1日より開始されます

改正パートタイム労働法、改正労働契約法および改正労働者派遣法 4月1日施行

同一労働同一賃金について、厚生労働省ホームページには「同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。」と記載されています。実現すれば非正規労働者にとって、とてもいいことなのですが、直接雇用のアルバイトやパートタイム労働者などの場合は、雇用主次第で実現可能でしょうが、三角雇用関係(雇用者と使用者が異なる)の労働者派遣の場合、そう簡単にはいきません。

派遣先の正社員との待遇差、つまり賃金の差をなくすにはまず、派遣先正社員の賃金がいくらなのかを知る必要があります。そのため派遣先はその情報(基本給など)を派遣元に提供する義務が課せられます。さらに、同賃金にするには派遣料金が上がる可能性が高いです。いや、上がりますと断言できるでしょう。というのは単純に考えても派遣料金には派遣元企業の利益を含んでいるわけですから派遣先の正社員と同賃金を確保しようとすると、正社員を直に雇うよりコストがかかることになります。本来はそれでいい(派遣料金は高くていい)のですが、現状は、人件費の削減目的で正社員代替として派遣を使うケース(これは違法です)が多々あり、派遣を使う方が安くなっています。ですから、派遣料金を上げてまで派遣を使い続けるというのは、派遣先にとっては本来の目的(人件費の削減)を果たさないことになります。

同一労働同一賃金に関する改正の概要

そこで、抜け道が用意されています。それは、「労使協定」方式です。労働者派遣の同一労働同一賃金については、
①派遣先労働者との均等・均衡方式
②労使協定による一定水準を満たす待遇決定方式(「労使協定」方式)
の2つがあります。右記(URL)「同一労働同一賃金に関する改正の概要」(厚生労働省資料)参照。

前者は上に記している通りですが、後者は派遣元企業において待遇に関して労使協定を結んで、それに従えばいいというものです。この「労使協定」方式によれば派遣先の正社員の賃金がいくらだろうが、関係ない、ということになります。こんなざる法を作って、よくもぬけぬけと同一労働同一賃金などど言えたものです。

また、派遣元企業において労使協定が可能かという問題もあります。労使協定は過半数を組織する労働組合があればその労働組合、なければ労働者代表と結ぶことになります。派遣労働者は、同じ派遣元で雇用が継続するとは限らず、しかも普段は派遣先で働いているのでバラバラでお互いの顔すら知らないことがほとんどです。派遣元企業において労働者代表を選出することができるでしょうか。できるはずがありません。派遣元企業によるでっち上げが目に見えています。派遣は本質的には供給であり、やってはいけない(職安法44条)ことです。営利企業が行う以上、問題のない派遣はありえません。

■ コンピュータ・ユニオン ソフトウェアセクション機関紙 ACCSESS 2020年1月 No.387 より

雇用類似で働く人に労働組合ができること

~労供労組協秋の学習会2019~

11月8~9日愛知県豊橋市で開催された「労供労組協秋の学習会2019」に参加しました。労供事業を営む労組が各地から集まりました。

【請負とクラウドワーカーの働き方は問題だらけ】

連合総研の杉山豊治副所長をお迎えし、「雇用類似の働き方と労働組合」と題した講演がありました。2017年に行った請負就業者とクラウドワーカーを対象とした意識調査を基に解説され、その後フリーランスの労供事業の可能性について話し合いました。

講演する杉山豊治さん

杉山さんが紹介したアンケート調査で浮かび上がったのは労働者としての権利の低さです。賃金、休暇、スキルアップの機会の無さ、トラブルがあっても相談先がないなど問題は山積みです。気になるのは、労働組合についての設問で「加入してないし、加入したくない」が73.1%、同業者の団体またはネットワークについても「加入してないし、加入したくない」が63.4%と、団体への拒否感があったことです。多数の労働組合が大企業正社員しか相手にしてこなかったことも事実なので、期待されないのもわかります。しかし、IT業界にもフリーランスは見えにくい形でたくさんいるし、不当な待遇で働く人がいることは、私たちにとっても相対的な賃金低下や長時間労働の拡大につながります。労組への理解を促す努力とともに、労働法に守られない労働者をなくす法整備および企業への規制が必要です。

 【日々雇用で強まる職安の圧力】

運転手の労供組合から、「日々雇用で仕事が切れた際に一般の雇用保険へ切り替えるよう職安から執拗に指導される。長年、供給組合に加入していればよしとされていた。さらに組合を介さず直接個人に圧力をかけてくるなど、組合無視、組合員の分断化が強まっている。職安には日雇い保険をなくしたい意図がある」との報告がありました。

【労供の社会保険適用は日々雇用に使えるか】

横山書記長は社会保険適用について説明し、「組合で社会保険に入れれば日雇い保険でなくてもいいのでは」と提案しました。それに対し、生コン労組からは「複数の兄弟会社に在籍させて所得税、保険料を節約し、長時間労働をさせるブラック企業が流行っている。『供給期間中に限り雇用責任を負う』というやり方を知れば悪用する者が出てくる」、港湾労組からは「社会労働保険の代行を担うには事務経費がかかる。港は法的に無理」といった意見がありました。コンピュータ・ユニオンには3年の期間制限を超えて臨時一時的な雇用を維持したい特殊事情があり、他の業界にもそれぞれの慣習や法律があることを共有して、全体の取り組みにはしないことになりました。

【協議会の緩さで労供の共通項を探したい】

全体として、各団体の自主性を尊重し縛りのない協議会の良さが生きた学習会でした。業種や地域により違いはあるものの、労供組合は弾圧による組合員の減少など厳しい状況にあります。拡大も必要ですが、この協議会の交流と討議を深めて、労働組合による労働者供給事業を守っていきたいと思います。

ブラックサンダー仕様の豊鉄市内線

【お疲れさんぽ】

豊橋はきゅうりのキューちゃんやブラックサンダー、ごみゼロ運動の発祥の地と、なかなかユニークな地域。半日の散歩を楽しんで帰京しました。

■ コンピュータ・ユニオン ソフトウェアセクション機関紙 ACCSESS 2019年12月 No.386 より

消費税の引き上げ、軽減税率、そして次はインボイス

2019年の10月から、消費税が10%になりました。

軽減税率導入で新聞が8%やらおもちゃとセットになったお菓子は10%やら、店内で食べると10%だけど持ち帰れば8%だと話題になったかと思えば、ポイント還元でキャッシュレス促進だとか、話題に事欠かない消費税ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
そんな消費税は、国税庁のHPには「販売やサービスの提供などの取引に対して広く公平に課税される税」と説明されています。
しかし、キャッシュレス決済でポイント還元とは言いますが、キャッシュレス決済を扱えない高齢者や小学生などが還元を受けられないという不公平さが指摘されています。そんな中、ひっそりと導入されるのが2021年度から段階的に導入されるインボイス制度で、主に個人事業主や零細企業が影響を大きく受ける制度です。

インボイス制度の説明をする前に、まず消費税の納税の仕組みについて図を使って再確認しましょう。
消費者が1万円の商品を買った場合の消費税は1000円なので、小売業者に1000円の消費税を支払います。小売業者は受け取った1000円を納税しなければなりません。しかしその商品を8000円で仕入れた場合は800円の消費税を製造業者に支払っています。
つまり、受け取った消費税1000円のうちの800円は既に支払い済みなので、差額の200円を納税します。この差額だけを納税する仕組みを転嫁と呼びます。
消費税を転嫁するためには仕入れにかかった消費税の額を把握し、証明できる状態にしなければなりませんが、その時に必要になるのが領収書です。インボイス制度が始まると、領収書に適格請求書発行事業者登録番号が記載された領収書しか消費税の転嫁が出来なくなります。
例えば仕事でタクシー移動をした時に受け取った領収書に、この登録番号が書かれていない場合、その領収書を会社に提出すると、タクシーに消費税を支払っているにもかかわらず、会社は消費税の転嫁が出来なくなってしまいます。当然会社は登録番号を記載したタクシー会社を使うように指示をするでしょうから、登録番号がなければ顧客を失ってしまいます。要は領収書に登録番号を記載すれば良いのですが、税務署に消費税を納税しなければ登録番号はもらえません。

しかし、制度としては売上高が1000万円以下の小規模な事業者と、開業2年以内の事業者はこの消費税の納税を免除されており、現在では免除された消費税は運転資金などに利用されています。
一方では免除をしながらも、一方では納税しなければ仕事が立ち行かないように切り替えようとしています。
これは個人事業主はもちろん、起業したばかりの会社を追い詰める制度です。
これまで免除していた事業者からも消費税を取るということも目的の一つでしょうけれども、小規模な事業所を廃業させ、新たな起業を抑制することで、大企業を優遇するのも目的の一つなのではないでしょうか。

消費税は既に引き上げられ、軽減税率も始まってしまいましたが、引き続き反対の意思を示していかなければなりません。

■ コンピュータ・ユニオン ソフトウェアセクション機関紙 ACCSESS 2019年11月 No.385 より