2022年2月17日(木)、労働法制中央連絡会が主催する「長時間労働をなくすために~36協定の基本と活用」という学習会に参加しました。講師は伊藤圭一さん。全労連で労働法制局長を務める労働問題の専門家です。
講座は、長時間労働を解消し生活時間と健康を守るために、36(さぶろく)協定を上手く活用することが有効であり、そのために基本から学ぼうという内容です。
【36協定は違法を免罰するもの】
労働基準法はこのように定めています。
第32条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。…
第35条 使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。…
第36条 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、 … … その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。…
重要なことは、時間外・休日労働は違法なもので、36協定は違法を「免罰」する効果を持つということです。講師の伊藤さんは、本来、時間外勤務は違法だけれど使用者側の罰則を免れさせるために結ぶ、という後ろめたさを持って結んでほしいと話します。また、使用者側は36協定を締結しなければ残業をさせられない一方、労働者側に36協定を締結する義務はありません。
【36協定は交渉カード】
JMITUの泉田さんはコインパーキングの停止板などを作る工場で働いています。昔から36協定を残業30時間まで、休日出勤1日までで毎月結んでいて、春闘や一時金など交渉事のたびに戦術として使っているそうです。
【労働時間は労組がチェック】
泉田さんの会社では、「誰がどんな作業で何時間残業するか」を会社に書面で提出させ、受け取った時点で執行部が集まって、認めるかどうか協議して回答する仕組み。従業員の健康を守るために短い期間で確認することが大切と話します。36協定の範囲内であっても、月を連続して80時間を超えないこともポイントです。
【過労死・過労自死には労働者代表にも責任】
厚労省の指針は、「長時間労働の解消は労使の責務」としています。残業時間が長くなるほど脳・心臓疾患との関連性が高まり、時間外労働は最小限にとどめられるべき。その業務を細かく具体的に定めなくてはならず、「やむを得ない場合」など恒常的に長時間労働を招くおそれがある書き方は認められません。
【コロナ禍の医療現場で特別条項拡大か?】
36協定には「通常予見することのできない業務量の大幅な増加等がある場合に臨時的に」労働時間規制を免れる特別条項を結ぶことができます。病院の労働組合の佐藤さんは、コロナ禍で多忙を極める医療現場や保健所ではこれを利用していると言います。もともと労基法33条に災害時に規制を外せる条文があるのだから、コロナ対応を理由に特別条項を結ぶべきではない、と主張しています。コロナももはや3年目、労使協定で超過勤務させるより、人員の増加が一番必要ではないでしょうか。
【労組ができること】
泉田さんは残業代が必要という従業員とも「わかるけどやっぱり賃上げが本筋だよね」と対話していると言います。医療現場の佐藤さんは、「すでに過労による健康被害は増えている。さらにハラスメントなど職場環境も悪化。組合はすぐに動ける体制が必要だ」と話していました。
労働組合は組合員の生活と健康に責任があり、労基法と労働運動は両方ともセットで重要です。労働者代表は自覚をもって協定を結び、組合員もきちんと監視する姿勢が大切だと思いました。
■ コンピュータ・ユニオン ソフトウェアセクション機関紙 ACCSESS 2022年3月 No.413 より