最近、農業関係のWebサイトや日本農業新聞でよく目にする話題について、農業の現場にいる立場から感じた事を書きます。
今から40年ぐらい前、実家の周りは田んぼだらけで(今もそんなに変わらないが)、ヘリコプターを使った農薬散布が年に数回行われていました。当時、小学生だった自分は、民家の屋根を、すれすれの高度で飛ぶヘリコプターが見たくて、散布中のヘリコプターを追いかけて、なんだか分からない農薬を全身に浴びていました。当然、大ざっぱな散布なので、関係ない畑や、ニジマスの養魚場の池なんかにも、そんな農薬がバンバン蒔かれていました。
時は流れ、技術進歩によってドローンという道具が開発されて、そんな農薬散布が、きめ細かい制御によって、必要な場所にだけ散布できるようになり、また、農作物の成長を、画像や視覚センサー、赤外線センサーで取得して、生産管理する試みも成果を上げてきているようです。
ただ、現在のところ、そうした活用ができる農作物は、稲や特定の野菜に限定されてしまっているように感じています。 ドローンは、どうしてもターゲットに対して一面的なアプローチになっていて(多分)、実際の農薬散布や、いろいろな情報収集は、もっと立体的な対応が必要で、例えば、害虫駆除の薬剤の散布は、葉っぱの裏側に潜む害虫に対しても、死角がでないように丁寧に散布する必要があるし、液体肥料なんかも、葉っぱの裏側からよく吸収されるので、そうした部分を狙った散布が出来ないとダメです。また、茂っていると葉っぱも幾重にも重なっているので、そうした一番下にある葉っぱの情報も拾えないと、病気も見落としてしまうでしょう。
・・・・と、そうは言っても近い将来、アクロバット的な飛行が、簡単に制御できるようになって、高性能、高解像度のカメラが搭載されて、そんな課題も解決される事を期待しています。そして、そんな高性能ドローンが、軍事的な利用や犯罪に使われて、利用の規制が厳しくなるのだけは、勘弁してほしいところであります。
■ コンピュータ・ユニオン ソフトウェアセクション機関紙 ACCSESS 2017年11月 No.361 より