――導入の狙いは多段階税率。増税目的か――
2月11日、CCU主催「インボイス学習会」に参加しまし た。参加者は講師を含めて21名でした。
CCU顧問の荻野直也税理士からレジュメにそって50 分ほど解説があり、質疑は70分近く続きました。これほど 質疑が7人の組合員から入れ替わり立ち代わり続いた学 習会というのは珍しいのではないかと思います。この制度 が問題含みであることの証明ではないでしょうか。
インボイスとは適格請求書等のことで、「仕入れ先が納 税したことを証明する書類」だそうです。
政府はインボイスの導入により、今後多段階の消費税 率が可能となり、さらなる増税がしやすくなります。合わせ て個人事業主や零細企業にとって益税となっていた消費 税分も回収できると考えているようです。
学習会の解説では、免税業者がインボイスを発行でき るようにするための申請手続や、今年10月1日から6年 間の経過措置についてと簡易課税制度について説明が ありました。IT業界の簡易課税制度は、売上げの50%を 仕入れ額とみなして控除できるという制度で、納税者にと ってはメリットが大です。
今回の学習会では、免税業者(個人事業主などの年間 売上げ一千万円以下の事業者)がどう扱われるのか、重 層構造のIT業界で免税業者が中間業者として係わった場 合はどうなるのか、CCUは組合員の個人情報を守れるの か、給与所得者が一時的に請負作業をした場合はどうな るのか、等の問題意識を持って参加しました。
まず、免税業者がインボイスの登録をしなかった場合、 本年10月1日からは発注元の課税業者が2割の消費税 を預かり、決算後に納付します。その3年後は5割、さらに その3年後は10割を納付します。
6年後、政府は益税となっていた消費税をほとんど納税 させることができるというわけです。
IT業界は重層構造が横行していますので、その点から 見てみましょう。
元請A社が110万円でシステムを受注し、その一部を B社に77万円で発注、さらにC社に55万円で発注し、D 社に33万円で発注したとします。各社は仕入れ控除を行 いますから、4社の消費税納付の合計額は10万円です。
ところが、B社、C社が個人事業主で免税業者だったら どうなるでしょう。インボイス登録をして いなければ、A社はB社の仕入れ控除 ができずに10万円納税します。D社が 派遣会社だった場合、C社は3万円の 消費税を支払います。A社とD社は合計 13万円を納付します。
個々の税務調査では判明しないかもしれませんが、税 の公平性は担保されません。なお、B社とC社の取引で消 費税がどう扱われるのかは明確ではありません。
組合員の個人情報保護の問題では、インボイス登録を した場合、氏名、住所の公表がなされる不安がありますが、 本学習会参加者の調査によると住所については、個人事 業主の場合は非公表でもよいことになったそうです。氏名 の公表についても申し出れば屋号でもよいというように変 わったそうです。ひとまずは安心しました。
給与所得者が一時的に請負作業をした場合の納税義 務はあるようですが、従来通り確定申告の際に事業所得 として税込みで申告すればよいとのことでした。
1989年に消費税が導入されて30年以上もたつので すが、今回の制度設計もずさんで不備が目立ちます。
ソフトウェアセクションは消費税の導入によって雇用と請負の間で悩まさ れ、組合員間に分断と混乱が持ちこまれました。
さらなる増税目的のインボイス制度を中止させるには 多くの国民と組合員の反対表明が必要です。
■ コンピュータ・ユニオン ソフトウェアセクション機関紙 ACCSESS 2023年3月 No.425