少し前から、デロゲーションというキーワードが話題になっています。デロゲーションという言葉はいろいろな意味があるようですが、今回は適用除外という意味合いで使われています。労使の合意があれば、労働基準法の適用を除外できるということだそうです。
労働基準法は、労働者が安全に健康的に生活するために定められた基準を示すものであり、いわば最低基準を示しているものです。それを労使の合意がある場合には下回っても良い仕組みを作ろうという動きです。
いやぁ…ダメに決まってるじゃないですか。最低基準ですよ。
目下のところでは、労働時間についての検討がされているようです。たくさん働いて、たくさんのお金を得たい人もいるでしょう?という話は、まぁわからなくもないんですが、そういった話ばかりじゃ無いことはこれまでの経緯をみても想像がつくかとおもいます。
「職種を限定して」「高度な能力がある場合のみ」といった条件をつけて導入し、その後条件を広げていく進め方もありました。
まぁ本人がいいならいいんじゃないの?といって許してしまえば、その後徐々に範囲が拡大されて、気づいたら多くの労働者が適用除外の対象になっていたということも考えられます。
そもそもその合意というのは本当に合意したものなのかもわかりません。会社と労働者を比較すれば、力関係が強いのは会社側です。会社から圧力をかけて労働者から不本意な合意を取り付けることは充分に考えられます。そしてそれは、転職しづらい状況にある人、収入が少なく生活に追われている人、つまり追い詰められている状況にあればあるほど圧力に抗うことは難しくなります。 それで健康被害が出たときにはどうするんですか。本人が合意してるんだから自己責任とでも言うのでしょうか。 うーん言いそうですねぇ。
しかしながら、振り返ってみるとこれはすでに一部は実現されているかのようにも感じます。 コロナが流行する少し前だったかと思いますが、社員から個人事業主に切り替えるという動きが一部でありました。もちろん本人の合意の元で進められるわけですが、個人事業主なので自分で労務管理をする必要があります。仕事の確保のために無理して請けることもあり得るかとおもいます。 そうなってしまうと状況としては同じではないかと心配になります。
労働者の健康や生活を守るためにも、このような動きにははっきりNOと言わなければならないと感じます。