注)施行直前の2021年12月に国税局から2年間の猶予が公表されました。
電子帳簿保存法って知ってますか?
雇用労働者として就労している場合、基本的には関係ないので知らない人も多いのではないかと思います。電子帳簿保存法は、国税関係の帳簿や書類を電子データで保存することを認めた法律です。
元来、請求書や領収書などは紙で保存するのが原則です。それをPDFなどの電子データで保存することを認めたのがこの法律で、ペーパーレス社会の促進のため、2022年1月に大幅に緩和されることになったのです。
さて、紙の請求書や領収書ってかさばりますよね。これをPDFで保管して紙の領収書を破棄していいなら、場所も取らなくて便利ですよね。ただ、そうする場合は事前に税務署に申請をする必要がありました。そのため殆どの会社では紙で保存をしています。これが2022年1月からは事前の申請が不要になるので、誰でも導入できるようになりました。
しかしそこに大きな落とし穴があります。
データで受け取った書類は、データで保存しなければならなくなります。例えばアマゾンで買った文房具を経費として扱う時に、印刷して保管していてはダメです。いや、ダメというのは語弊がありますね。紙で保存することはかまいませんが、それはただの参考記録でしかなく、法律を遵守できていないことになります。正しくは、ハードディスクなどに電子データとして保存しなければなりません。
このとき、検索すればいつでも見られる状態にしておかなくてはなりません。国税庁が推奨しているやり方は2つあり、1つはエクセルで一覧表を作って管理する方法です。もう1つはファイル名に日付・取引先、金額をつけて保存するというやり方です。ですから、「メールで受信しているからメーラに保存されています!」というのはダメですし、「アマゾンの購入履歴から見れます!」というのもダメです。どちらも一覧を作っておく必要があります。
ただし、売上高が1千万以下の事業者は検索までは対応する必要はありませんので、大半の個人事業主の方はとにかくデータで保存というルールさえ守れば大丈夫です。
また、電子データが改ざんされていないことを保証する必要があり、次の3パターンから対応を選択する必要があります。
1.タイムスタンプをつける
タイムスタンプって、ファイルについてる時間のことではなく、ある時刻にその電子データが存在していたことと、それ以降改ざんされていないことを証明する技術です。導入には相応のコストがかかります。
2.訂正・削除を記録できるシステムを導入する
これはサブバージョンなどの世代管理ソフトを使えば対応可能そうです。
3.事務処理規定を作る
「改ざんしないという事務処理規定を遵守しているから、改ざんはしていません!」と言うことですが……。まぁ前述の対応は一般的には簡単に導入できないので、救済措置のための手段といえるでしょう。
あぁめんどくさい!電子取引なんてやめやめ!注文書も請求書も紙でやるわ!というペーパレスとは真逆の意見や問い合わせが多数あったようで、11月12日には、「電子データの一部を書面で保存していた場合でも、きちんと記帳して申告してた場合は、直ちに青色取消になったり、経費として認められないことになるわけではない」という旨の見解が出ました。
とはいえ多少不備がある程度は見逃してやるという意味だと思いますので、しっかりと対応を進めていく必要があります。
■ コンピュータ・ユニオン ソフトウェアセクション機関紙 ACCSESS 2021年12月 No.410 より