河野太郎デジタル相は、10月13日、マイナンバーカード普及促進のために、国民の命綱である健康保険証を2024年秋に廃止し、マイナンバーカードにその機能を持たせることを発表しました。カードを持たない人にはどのように対応するかは回答しませんでした。さすがに、岸田文雄首相は、代替物を検討するといっていますが、どうなるかは予断を許しません。古希を過ぎた私には気がかりな問題がまた一つ増えました。
Wikipediaによれば、マイナンバー制度は、民主党が政権につく時の公約に、所得税の把握のために税と社会保障に共通な番号制度の導入を提案していたものを、第2次安倍内閣で健康、税制、震災に限って活用する制度として発足させたと記しています。
ところで、年末調整をする組合員は労働組合や、企業組合に各自のマイナンバーを提出されていると思います。マイナンバーは特定個人情報のため、選任された事務局担当者しか見られないようにし、かつ、PCを使う場合でもネットから遮断しているはずです。
私がマイナンバー制度に不満を持ったのは、ほぼ5年前の2018年で、税還付のために確定申告が必要になった時のことです。当時は65歳。久しぶりの確定申告で、マイナンバーを記入して関係書類をそろえて提出しましたが、翌年以降も同様に書類提出を求められるという事が判明しました。法人が従業員の年末調整を行う場合、各人からマイナンバーの関係書類を毎回提出させることはしません。確定申告する人(税務署のPCで入力)には、税務署が独自の番号をふっており、毎年申告する人は、スムーズな手続きができていました。無駄なことをさせるものだと感じました。
同年には源泉徴収票などの入力業務を国税庁から受託した業者が外部委託し、そこから70万件のマイナンバーを含むデータが流失したとの報道がありました。行政のマイナンバーの取り扱いは結構いい加減なのではないかと不安になりました。こうした例からもおわかりだと思いますが、日本政府の個人情報に対する取り扱いは、EUに比べてとても杜撰だと思います。
現行の健康保険証のしくみは、特に問題もなく運用されています。したがって、マイナンバーカードに取り込む必要性は全くないと思います。
例えばシステム障害が発生した時に、ICカードリーダが読み取り不能になったら、その日の診療は受けられないのでしょうか。健康保険証に代わるものがないと、とりあえず10割負担でしょうか。この年齢になって万単位の支出は結構辛いですね。
でも、デジタル庁は、マイナポータルの利用規約の第3条で、システムは自己責任で利用するよう求めています。マイナンバーに組み込まれる健康保健証はマイナポータルから手続きさせるようですから、何だかひどい扱いになりそうです。
その上、この利用規約では、やたらと内閣総理大臣への同意を求めています。まるで政府が国民の個人情報を一元管理するかのように感じました。
この規約については、技術部か顧問弁護士による学習会でも企画していただけるとありがたいですね。
個人情報は一度漏洩したら取り返しがつきません。
したがって、マイナンバー制度にはGDPR(EUが定める個人データ取扱いに関する規則)と同レベルの個人情報保護の観点が十分に盛り込まれて制度設計がなされる必要があると考えます。
皆さんは今回の健康保険証の取り扱いについてどのような意見をお持ちでしょうか。
■ コンピュータ・ユニオン ソフトウェアセクション機関紙 ACCSESS 2022年12月 No.422 より