今から 30 年以上も前のお話。私は MIC(日本マスコミ文化情報労組会議)傘下の労組がある映画会社に在籍していました。
時代はバブルへまっしぐらのとき、学校を出たばかりの私は、組合幹部の方々が就労時間外に組合員のために頑張っている姿にひどく嫌悪感を抱いておりました。そして、バブルは崩壊。あの日、全社員が集合を命じられ、社長から会社更生法を申請し、事実上の倒産が発表されました。経営陣は去り、広い社屋には、社員だけが取り残されました。
席に戻った私は、漆黒の暗闇に一人佇む孤独感と将来への恐怖を忘れようとするかのように業務に没頭しました。社内で話をする者は誰一人おらず、静まり返っていました。
ほどなく組合本部より集合がかかり、現状と今後の説明が行われました。会社更生法により社員は守られること。遅延していた給与は組合から支払われることなど。
暗かった心が、明るくなるのを感じた。周囲も会話が始まり、表情を明るくなった。何があったというわけでもなく、「一人ではないこと。皆がいる」と気づかせてくれたのは組合員の為、頑張っていた労働組合でした。
帰りのエレベータの中で、親しくしていた秘書と一緒になりました。彼女も先ほどまでの私と同じ目をしていました。組合員になれなかった彼女は一人で孤独に耐えていたのです。私は組合員になる手続きを委員長に依頼。承諾。彼女の目から安堵の涙が流れました。
労働組合が弱体化する昨今にあって、一般法人やNPO 法人などが有効かもしれない。それでも言うたる。「労働組合は皆の味方」です。
■ コンピュータ・ユニオン ソフトウェアセクション機関紙 ACCSESS 2024年3月 No.437 より